当事務所の提供する個人のお客様向けの業務の一部をご案内します。
こちらでは、債務整理の方法について、ご説明します。
1 任意整理
任意整理とは、貸金業者と交渉して、借金の減額や今後の利息のカットをしてもらい、収入の範囲内で無理なく返済できる返済計画で和解(再契約)する方法です。
以前は多くの貸金業者が利息制限法の定める上限利息(年15~20%)以上の利息を取っていましたが、その上限利息を超えていた部分は、本来支払わなくてもよかった利息です(いわゆる「グレーゾーン金利」)。 このため、任意整理では、貸金業者との契約が、仮に最初から利息制限法の上限利率だったとした場合の金額を計算し(いわゆる「引直し計算」)、本来支払わなくてもよかった利息も元金への返済をしたものとして計算します。 このような計算を行うと、現在の債務の残高は、貸金業者から請求されていた金額より大幅に少なくなることも多いです(この計算の結果、債務の残高がゼロになり、さらに支払い過ぎの利息がある場合を「過払い」と呼びます。過払金については、後述します)。
任意整理では、この少なくなった債務の残高を基にして、さらなる減額を求めたり、支払を分割したりする交渉を行います。多くの貸金業者との間で、今後の利息なしで、減額された金額を3~5年間で分割返済する,という内容の和解(再契約)が可能です。
交渉がまとまると、和解書(合意書、示談書ともいいます。)を作成して、以後は、その和解に基づいて支払いを行って頂くことになります。
2 個人再生
個人再生は、裁判所を通じて、債務額を大きくカットしたうえで分割返済する方法で、主に失いたくない自宅不動産がある場合などに用いられます。
債務額は、(1)法の定める債務額に応じた最低弁済額(例:債務額500万円なら100万円)、(2)仮に財産を清算した場合の金額,のいずれか大きい方までのカットが可能です(個人事業者再生の場合です。給与所得者再生の場合、これに、(3)可処分所得額の2年分,が加わり、このうち最も大きい金額までのカットとなります。)。
この減額された金額を、3~5年間で分割返済する,という内容の再生計画を裁判所で認めてもらい、その計画が認可されたら以後はそれに従って支払いを行って頂くことになります。
なお、住宅ローンを支払っている場合、その住宅ローンはそのまま支払いながら、その他の債務をカットすることもできます(適用できるかは、詳細な要件があるため、弁護士にお問い合わせください)。
この個人再生のメリットは、債務額を大幅にカットできる、残債務も分割支払いができる、自宅不動産を手放さなくてもいい場合があるという点にあります。
逆にデメリットとしては、再生計画に従った支払いができない場合には、カットされていた債務が復活し、元の債務額を返済しなければならなくなる場合があります。もっとも、その状況では、元の債務額の支払いは困難でしょうから、その時点で破産に移行せざるを得なくなります。その場合、それまで再生計画に従って支払いをしてきた部分が無駄になってしまいますので、当初から再生ではなく破産をするべきだったということになります。
すなわち、個人再生を選択するときには、3~5年間の再生計画に従った支払いがきちんとできるほどに安定した収入があることが条件となるといえるでしょう。
3 自己破産
裁判所を通じて、債務の免除を得るための手続です。
破産者が不動産や高価な財産を持っていない場合の多くは、簡易な同時廃止事件として処理されます(破産手続開始決定と同時に破産手続が廃止されるためこのような名前で呼ばれます。手続はその後、引き続き債務を免除するための免責手続に移行します。)。
同時廃止事件であれば、裁判所に要する費用は1~2万円程度(弁護士費用は別途必要です。)、期間も約4か月程度で終了します。
一方、破産者が不動産や高価な財産を持っている場合は、裁判所に選任された破産管財人がそれらを換価して配当等を行う管材事件となります。管材事件の場合、裁判所に要する費用は少なくとも20万円以上(弁護士費用は別途)ですし、期間も短くて半年以上かかります。
破産のメリットは、債務が免除されるのでその後の支払いを行う必要がなくなること(租税債権など一定の例外はあります。)、強制執行等を受けていた場合には解放されること、一定の財産は確保できること(自由財産と呼ばれます。)、破産手続開始決定後に得た財産は自分のものになること(新得財産と呼ばれます。)などが挙げられます。
一方、デメリットとしては、破産手続開始決定から免責決定確定までの間、弁護士、税理士、保険外交員、運転代行業、警備員など就けない職業があること(免責決定確定後は、これらの職に就くことはできます。)、官報に名前が載ること、一定以上の財産は換価される可能性があるなどがありますが、一般に思われているほど大きなデメリットはありません(誤解されている方がいらっしゃるようですが、戸籍には載りません)。
周囲の人に破産したことを知られるのが不安という方もおられますが、破産したことは、官報に2回記載される以外は、人の目に触れることはないので、まず知られることはありません。
また、破産した場合に、車などを含めて全ての財産を奪われると誤解している方もおられますが、必ずしも全ての財産を失うというわけではありません。
東京地裁の場合、生活必需品などの差押禁止財産のほか、残高(複数ある場合は合計額)が20万円以下の預貯金、見込額(複数ある場合は合計額)が20万円以下の生命保険契約解約返戻金、処分見込額価額が20万円以下の自動車、居住用家屋の敷金債権などは、自由財産として持ったまま破産をすることができます。
「破産」という言葉の悪イメージにとらわれず、弁護士に相談する等して正確な情報を得て、適切な判断する必要があります。
4 特定調停
裁判所での手続で、調停委員主導のもと、債権者との今後の返済条件について話し合い、合意を目指します。
合意に達しないときは、裁判所により合意に代わる決定が行われる場合もあります。
5 過払金回収
1の任意整理でご説明したように、これまで利息制限法の上限利率(年15~20%)を超えた利息を支払っていた場合、上限利率に引き直して計算をすることによって債務を減少させることができますが、さらに支払った利息が多い場合は、債務額がゼロになったうえで、払い過ぎの利息がある場合があります。この状態を「過払い」といい、その支払い過ぎたお金を「過払金」といいます。
過払金は、法律上の原因なく貸金業者が保有しているお金ですので、不当利得金として返してもらうことができます。
さらに、現在の裁判の大勢は、貸金業者は悪意で(すなわち、そのお金が不当利得金と知っていながら)保有していたと認定されていることから、不当利得金に対して年5パーセントの利息を付けて返してもらうことができます。
引直し計算の結果、過払金があると判明した場合、速やかにその支払いを請求します。
もっとも、昨今、貸金業者の多くは経営が困難になっているようで、過払金返還請求に対しては、その減額を求めてくる業者がほとんどです。しかし、そのような貸金業者からこそ早期の回収を図らなければ、支払いを受けることが不可能になってしまう可能性があります。
任意に過払金を返還しない貸金業者に対しては、即座に訴訟提起を行うなどして、断固たる態度で回収を行います。
6 ヤミ金対応
貸金業登録を受けず、違法な高金利の支払いを請求する貸金業者がいわゆるヤミ金融(ヤミ金)です。
執拗な取立てに対しては、決して屈することなく、時には警察の助力を得ながら、毅然と対応する必要があります。
違法な高金利を求める契約はそれ自体無効で、払い過ぎた利息はもちろん、元金部分についても返還請求をすることができます(最高裁判決平成20年6月10日)。
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