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非嫡出子の相続分に関する最高裁決定について(解説)
2013年09月12日
平成25年9月4日、最高裁大法廷が、非嫡出子の相続分を嫡出子の2分の1と定めた民法900条4号但書の規定について違憲とする判断を下しました。この判断の内容と、過去の相続への影響について解説します。
(1)最高裁平成25年9月4日決定
民法上、(認知を受けた)非嫡出子の法定相続分は嫡出子の2分の1とされています(民法900条4号但書)。
しかしながら、最高裁大法廷は、平成25年9月4日付の決定において、この定めを違憲であると判断しました。いずれ、民法の定めが改正されることと予想されます。
また、上記最高裁決定の結果として、決定後は(民法の改正を待たずに)非嫡出子も嫡出子と同等の法定相続分があるものとして計算することとなります。
(2)過去に発生した相続への影響について
それでは、最高裁の平成25年9月4日決定は、過去に発生した相続についてどのような影響があるのでしょうか。
(a)既に決着した相続について
上記最高裁決定は、平成13年7月から平成25年9月4日までの間に開始された他の相続につき、民法900条4号但書を前提としてされた遺産の分割の審判その他の裁判、遺産の分割の協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼすものではないと述べています。
最高裁がこのような判断を行った理由は、過去に遡って遺産分割や審判の効力を失わせることは、世の中に大きな混乱をもたらしかねないからです。
従って、既に行われた遺産分割の合意や審判については、その効力は最高裁決定後も維持されるものと考えられます。
(b)決着前の相続について
過去に発生した相続のうち、まだ遺産分割が行われていないものについては、今後は非嫡出子も嫡出子と同じ相続分があるものとして相続するものと説明しました。
ところで、世の中には、相続が発生した後、遺産分割を行わないまま数十年が経過する場合もあります。このような、昔に発生した相続についても、非嫡出子が嫡出子と同じ相続分があるか否かについては、検討の余地があります。
もともと、最高裁は、平成25年9月4日の決定以前は、繰り返し非嫡出子の相続分を定めた民法900条4号但書を合憲と判断してきました。
これに対し平成25年9月4日の決定では、「我が国における家族形態の多様化やこれに伴う国民の意識の変化」など、時代の変化を挙げ、(この決定の対象となった相続が発生した)「遅くとも平成13年7月当時において、憲法14条1項に違反していた」と判断しています。
すなわち、平成25年9月4日の決定は、平成13年7月以前に発生した相続に関する非嫡出子の相続分については、民法900条4号但書の適用について合憲違憲どちらとも判断していません。
むしろ最高裁は、平成25年9月4日の決定では、従前の民法900条4号但書の適用を合憲とする判断について、「その相続開始時点での本件規定の合憲性を肯定した判断を変更するものではない」と述べています。
そして、これらの従前の判断の中には、平成12年6月30日に発生した相続を対象とするもの(最高裁判所平成21年9月30日決定)があります。従って、平成12年6月以前に発生した相続については、なお民法900条4号但書を合憲とする判断は維持される可能性が高いものと思われます。
以上、結論として、①平成12年6月以前の相続については、非嫡出子の相続分は嫡出子の2分の1、②平成12年6月から平成13年7月までの相続については不明、③平成13年7月以降の相続については、非嫡出子の相続分は嫡出子と同じとなるものと思われます。もっとも、上記②については、実際上は違憲とする判断が出やすいものと思われます。
(文責:弁護士 加藤尚憲)